東京高等裁判所 昭和33年(う)992号 判決
被告人 田村正俊
〔抄 録〕
原審公判調書には弁護人が、本件犯行当時被告人が心神耗弱の状況にあつたとの主張をした旨の明確な記載を欠いているが、その第二回公判期日(被告人川村忠正同待島守保の事件との併合前の)においては、弁護人から被告人の知能程度その他情状関係を立証趣旨として証人大山千代次、田村イセ、関戸小一外二名の取調及び被告人の精神鑑定を申請し、第三回公判期日において、弁護人より被告人の正常な判断能力が欠けていることを立証趣旨として証人根岸金吾の取調を請求し、第四回公判期日において、弁護人より右根岸証人作成にかかる被告人の性格異常等に関する診断書の取調を請求し、更に同期日に行われた最終弁論において弁護人が、被告人の精神状態については、その判断力が通常人の半分以下であることが明白である旨の陳述がなされていることは、各当該公判調書の記載により明白であつて、これ等の状況から見ると、弁護人はその主張を明確には述べなかつたとしても、刑法第三十九条第二項のいわゆる心神耗弱の主張をなしたものと認めるのを相当とする。然るに、原判決はこの主張に関し何等判断を示しておらず、刑事訴訟法第三百三十五条第二項に違反し、その違反が判決に影響があると認められるから論旨は理由がある。
(加納 村木 山岸)